Beacon of Fashion – Autumn Vintage –

久しぶりにふらりと山下公園へ。

暑さは残りますが、風の匂いが変わりましたね。

8月も終わりを迎え、季節が変わっていくのでしょうか。ぼんやりと氷川丸を眺めます。

 

皆さんこんにちは。ビンテージの今と昔を伝えます。vintage教授のyujiです。

それにしても本当に大きな船ですね。

つい見とれてしまいますが、今回の主役は実は他にいるのです。

 

「白灯台」

氷川丸の横にそっと立っている白い灯台。

今は現役を退いていますが、長い間、港に入ってくる船を誘導する大切な役目を担っていました。

 

そして実はもう一1つ、この白灯台と対になっている灯台があるのを皆様はご存知でしょうか?

 

建造物 「赤灯台」 設計士 : H.S. パーマー

建造年 : 1896年(明治29年)

イギリス人技師、H.S. パーマーによって建てられたその日から100年以上、

絶え間なく光続けている横浜のアイコンの1つ、赤灯台。

建造当時から形を変えず、今も立ち続けています。

 

驚くべきことに、こちらはまだ現役の灯台として赤い光を放ち続けているのです。

現在は陸続きでは無い為歩いていくことはできませんが、山下公園からその姿を見ることができます。

 

余談ですが、港には国際ルールで、紅白の灯台を設置することが義務づけられています。
横浜港内に入る際、右に赤灯台、左に白灯台の光を確認しながら入っていきます。

 

ちなみに現在日本に設置されている灯台の数は約3000台。

年々その数は減っているようですが、赤灯台はその中で最も古い現役の灯台の1つ。

 

そして今日はもう一つ、海を越えた遥か彼方で未だに立ち続ける古い灯台をご紹介致します。

 

建造物 「Herd Groyne Lighthouse」 設計者 : 不明

建造年 : 1882年

 

イギリス北東部、港町サウスシールズにある赤灯台。

ここからおよそ9000キロ離れた横浜に立つ赤灯台と、ほぼ同時期に建造された赤灯台。

見た目もとてもよく似ています。

 

建造から今年で137年。様々な時代に光を送り続けてきました。

その光の中で、当時命を懸けて働く男達の物語がありました。

 

この赤灯台が現役で活躍していた頃、その光を頼りに働く港の男達と、

彼らを支えた革命的な作業着があったのをご存知でしょうか?

 

 

その名も、Barbour。

沿岸部で働く水夫達の作業着として生まれた、言わずと知れたワークウェアの代表格は、この港町サウスシールズで誕生したのです。

今回は、このBarbourの生い立ちを皆様にご紹介致します。

 

サウスシールズは造船と炭鉱が盛んな街で、沿岸部では実に多くの労働者が働いていました。

これは1920年頃のサウスシールズ。中央には炭鉱から運ばれる鉱物が積まれた列車が走っています。

そして奥にはあの赤灯台が立っています。

 

特に造船業が最も盛んで、第2次世界大戦前後に衰退するまで、この町の産業を支えていたのです。

 

そんな港湾で働く水夫達の悩みは作業着。

厳しい天候の中で働く彼らは荒れ狂う海や振り続ける雨で体を冷やさぬよう、

優れた防水機能を持つの作業着を必要としていました。

 

1900年代初頭のイギリスにナイロンはまだ存在しなかった為、彼らは知恵を絞り、当時は魚から取れる油を染みこませた作業着で身を守っていたのですが実用性に乏しく、長くは持ちませんでした。

 

J.Barbour & Sons  創業 : 1894年

 

そこへ登場したのがBarbourです。

良質なコットンに特殊な油脂を含ませた耐水性の高い生地「オイルスキン」を使ったコートを開発、

レインウェアとして水夫達に提供し始めたのです。

これが、オイルドクロスのジャケットやコートの原点となります。

 

従来の雨具とは比較にならないほど高い防水性能を持ち、丈夫で長持ちする Barbourのオイルスキンコートは、

港湾で働く水夫たち作業員の間で忽ち評判となり、サウスシールズに革命をもたらしました。

 

”The best British clothing for the worst British Weather” 「イギリスの悪天候に最も適した服」

当時のBarbourのスローガンです。

Barbourは見事にその高い防水機能を発揮し、北東部の天候不順の海で戦う男達を守り、当時最高のレインウェアメーカーとして不動の地位を獲得します。その評判はやがてサウスシールズからイギリス全土に広がっていきます。

 

優れたワークウェアが世に広まり人気を得るのはいつの時代も同じです。

この灯台のマークがブランドロゴとして定着したBarbourの名前は、労働者だけでなく都市に行きる様々な人達に広がっていくのです。

 

その機能性の高さから、山や川釣りを楽しむアウトドアシーンいおいても注目を浴び、

カントリースタイルの顔としても定着し始めるのです。

 

更に進化を続けるBarbourのレインコートはやがて都市部に生きる人々の間で広まっていきます。

雨の多いイギリスでは必然と言える流れかもしれません。

Barbourの持つ多様性はここからさらに盛り上がりを見せて行きます。

 

雨を防ぎ、風の進入を防ぐBarbourのジャケットは様々なシーンで注目され始めます。

 

中でもbarbour の名前を世界中に広めたのが、映画の影響です。

「大脱走」のスティーブマックイーン、「007」のJames Bondが着用するなど、

著名な映画への登場で爆発的な人気を獲得します。

 

そしてイギリスに生きるあらゆる人達の生活を支えてきた実績とその高い品質が認められ、

Barbourは遂に、名誉ある英国王室御用達として認定され、イギリスを代表するブランドしてその名を世界に広めていくのです。

 

Harbour, Country. そしてCity。
全天候型。あらゆるシーンにおいて然るべき装いに完全に溶け込み、

Fisherman、Hunter、Urban というスタイルをたった1着で確立できる、今も昔も変わらぬ、最も優れたブランド。

 

港町で生まれ、野山で育ち、都会へ出たBarbour。

今ではあまりにも有名なブランド。そのルーツをよく知る人は少ないのではないでしょうか?

100年以上続く歴史のそのスタートラインにはこの灯台の光があるのです。

 

港から王室へ。水夫から女王へ。

創業から100年以上、形を変えず、その輝きを失わず、常に光を放ち、
あらゆる世代に於いて導き役としての役割を果たし、

ファッショニスタに次の世紀へとその道を照らし続けているBarbourは、

こうして私達の元へ辿り着いたのです。

 

道に迷った時ほど一度原点に帰るといいますが、
それすら見失ってしまうほど遠くまで来た時、力強く光る灯台の燈りがあります。

道に迷い、暗闇を彷徨った時間が長い程、眩しいと感じることでしょう。

 

辿り着いてみると、その頼もしさに改めて気付き、同時に新しさすら感じる 灯台の存在。

大げさに感じるでしょうが、その力が巨大客船をも陸へ引き寄せ、人もまた導くのです。

 

サウスシールズでは現在でも、海上に深い霧が立ち込めると、

あの赤灯台が10秒に1度、鐘を鳴らして海洋で彷徨う船舶に呼びかけるようです。

 

 

去年よりも更に魅力を感じているBarbour。

本日はその歴史をほんの少しご紹介致しました。

いよいよ始まる秋物巡りの旅のしおりとしてお読み下さい。

船出はブラウベルグよりどうぞ。

このコラムが、光の速さで皆様に届きますように。

 

港町である横浜でbarbourを纏う。

妙に誇らしくなってしまいます。

 

いやあ、古いものってやっぱりいいものですよね。

また好きになってしまいました。

 

それでは本日も横浜で、皆様をお待ちしています。

 

yuji

 


 

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